夏休み 6
私の行く所行く所、アイハラカイがいるのである。
朝、下駄箱で上履きに履きかえていると、後ろをバタバタ走って行く人がいる。何気なしにそちらの方を見ると、丁度、今まさに上履きを取ろうと屈んでいるアイハラカイがいる。
休み時間、四階にある我が教室の窓の手摺りに凭れて、友人と喋りながら下の中庭で遊ぶ人たちを見ていると、アイハラカイが人をよけながら横断して行く。
職員室へ回収した提出物を届けに行けば、なぜか、電話をしているアイハラカイがいる。
廊下を歩けばアイハラカイが前からやって来るのである、しょっちゅう。
「またアイハラカイを見てしまった」
一学期が終わる頃には、一日に一度は必ずこんなことを呟く習慣が私についてしまっていた。
夏休みに入って二週間、私はアイハラカイに一度も会わない。
「何やってんだろうか、夏休み」
私はムックリ起き上がり、学生名簿を脇に置いて、テレビのリモコンのスイッチをオンした。
再放送のサスペンスドラマが画面に映し出された。女優が地味な服を着て、遊歩道を茫洋と歩いている。
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